いつも笑顔でお母さん

足利市教育委員会教育長 若井祐平 

 お母さんの体にしがみつき、お母さんもしっかりと抱いている。お乳を飲んでいる赤ちゃんは、お母さんの目をじっと見あげている。その目は澄んでいて、安心しきっている。

 一方お母さんはその時どうしているでしょう。お母さんも、お乳を飲んでいる赤ちゃんの目をじっと見ていらっしゃる。その目はお母さんの一番穏やかな美しい目です。お母さんの目と赤ちゃんの目がつながっています。

 私はこの時が一番大切だと思っている。お母さんの見つめる目は

「元気に大きく育ってね」

「かしこくなるんですよ」

「いい子になってね」

と赤ちゃんに向かって一生懸命語っているのです。

その目を赤ちゃんはじっと見ている。

(「『叱られて』の歌が聞こえてくる」吉岡たすく著から)

 

 この文から、何ともいえない母親の我が子への愛情がいっぱいに伝わってきます。

 2019年度版に掲載されています「あしかが子育て応援ネット」代表岡島敦子さんの「鳩の子育て」を読ませていただきました。「子育てという営みは人も鳥もかわらないのかもしれない」とおっしゃることに共感いたしました。吉岡たすくさんも鳥の子育ての姿をとおして「子離れ」について考えを書いています。その概要を紹介します。

 親鳥は卵からかえった雛を育て続け、やがて成長すると飛び方を教えます。親鳥は枝の上を少しずつ先の方に移動していき、そこで待ちます。子どもたちが飛ぶ。しかし三羽いれば、全部同じように飛べません。一羽、飛べない子どもがいると、じっと待ちます。親鳥はぴーぴー鳴いているだけです。(おそらく人間だとそばに行って手を差し伸べるでしょう)。ぽんと飛べたら、次はこっちの枝、その次はあっちの枝と親鳥は少しづつ離れていきます。

 ある程度子どもたちが飛べるようになったある日、親鳥はえさを取りに行ったまま帰ってきません。お腹を空かして子どもはやがて自分でえさを探しに飛び立っていくのです。

 

 母親の笑顔は、子どもにとって心の安定をもたらすなにものにも替え難いものです。心の安定した中で、安心し、子どもは独り立ちできるようにたくましく成長していきます。

 家庭は愛の絆の上に成り立っています。夫婦の愛、親子の愛、兄弟姉妹の愛、祖父母への愛などそれぞれの愛が集まっているところが家庭です。

 そして何よりも、お母さんの笑顔が一番です。